デザイン事務所経営者などの方へ

デザイン事務所経営者の方や企業のデザイン部門のご担当者の方へは

 素材の著作権処理
 クライアントとの制作委託契約
 社員デザイナー・外注先との契約
 デジタルデータの管理
 意匠登録  など

業務や契約上の知的財産権に関するさまざまな問題についてのご相談をうけたまわります。

■素材の著作権処理について
  •  最近はクライアント側のリスク意識も高まり、後日のトラブル発生に対する自衛策として制作委託契約書に「著作権処理は製作者側の責任であり、発注者は責任を負わない」といった主旨の「保証条項」を入れてくるケースが増えています。
     ですから制作者側にとっても、きちんとした権利処理は自己防衛のために避けては通れませんし、クライアントから渡された素材に著作権侵害が潜んでいる可能性もあるので注意が必要です。
     自社の側で用意した素材については著作物調査を、クライアント提供の素材については契約書において「逆・保証条項」を入れてもらうなどの対策が必要です。

■クライアントとの制作委託契約について
  •  個人クリエイターとは違い、デザイン事務所が結ぶ制作委託契約なら納品物の仕様や納期、制作料金などについては比較的きちんと取り決めている場合が多いでしょう。
     しかし、納品物の著作権の帰属や使用条件などについては、まだまだ曖昧な場合が多いのが実情です。

     いわゆる「買い取り方式」であっても著作者人格権は制作した側にありますから、制作者は無断で改変したりされない権利を主張できます。
     また、「著作権法27条・28条の権利を含め、制作者はすべての著作権を譲渡する」と取り決めていない限り、クライアントは納品物を勝手に加工して別の作品(二次的著作物)を作ることはできず、それを認めたとしても、制作者はその二次的著作物の第三者による利用を許諾する権利を有しているのです。

     デザインは決して「売り切り」ではないのです。安い価格で「売ってしまった」デザインが世に出てからヒットし、様々に活用されて利益を生むのを指をくわえて見ているだけ、ということがないように、制作委託契約の段階で注意を払うべきでしょう。

■社員デザイナー・外注先との契約について
  • 社員デザイナーの場合
     社員デザイナーが創作したデザインの権利は、自動的に必ずデザイン事務所のものになるわけではありません。そのデザインが意匠なのか著作物なのかによって取扱いも異なります。

     意匠の場合、「職務創作」の条件が成立すればデザイン事務所はタダでそのデザインを使用できますが、「職務創作」なのかどうか微妙な場合も多く、最近は社員デザイナーとの間でのトラブルも増えています。

     同様に、デザインが「美術の著作物」である場合も「職務著作」として事務所が権利を得るためには法律上の条件を満たす必要があります。

     ですから、社員デザイナーの創作(著作)であっても、その性質や完成までの経緯、今後それをどのように使用するか、などによって単純には事務所の「財産」にはならないことに注意し、社員デザイナーとの間で契約書を交わしておく必要性もあることを考えるべきです。

    外部デザイナーの場合
     一方、外部デザイナーにデザイン制作を委託した場合は、委任契約(あるいは請負契約)となります。
     ですから、契約の内容として納品物の著作権などを譲り受けるのか、それとも使用許諾を受けるのかを明らかにしておく必要があります。

     この場合、「当然、買い取りだから大丈夫」と思っていても、前述のように著作者人格権や二次的著作物に関する権利を委託先から主張されるおそれはあるからです。

■デジタルデータの管理について
  •  デザイン事務所として印刷・納品まで行えば、デジタルデータは手許に保管しているケースが多いでしょう。
     そして、デザインがヒットした場合にはクライアントがデジタルデータの引渡しを要求してくることもあります。
     制作料を払ったのだからデータの所有権もクライアント側にある、という発想です。

     しかし、たとえデザイン事務所が納品物の著作権をクライアントに譲渡していたとしても、制作委託契約でデータの引渡しを約束していない限り、無償でデータを渡す義務はなく、渡すにしても使用方法に応じて適切な使用料を請求することができるのです。
     制作委託契約においては、契約上の納品物は何かを明確にする必要がありますし、こうしたデジタルデータの取扱いについても注意が必要です。

■意匠登録について
  •  商品デザインの開発は、商品コンセプト決定→デザイン方針決定→ラフスケッチ(複数案)作成→絞り込み→模型制作→改良・修正→製品化、といった流れが一般的です。

     優れた商品デザインを模倣から守るためには、製品化段階に入ってから防衛策を考えるのでは遅すぎます。

     意匠登録までしない場合、不正競争防止法(模倣禁止)で模倣に対抗することになりますが、結局のところ模倣品を排除したり損害賠償請求したりするためには「まぎれもなく自社で創作したデザインであること」の証拠を提出する必要があり、そのためにはデザイン開発の早い段階から経過資料を保管・整理して用意しておくことが必要だからです。

     もちろん、意匠登録を受けることが最強の防衛策ですが、意匠登録はご存じのように「先願主義(早い者勝ち)」ですから、似たようなデザインを他社に先登録されたり、出願前に類似品を販売されて先使用権を主張されたりするおそれがあります。

     通常、意匠登録を考えるクライアントは、制作委託したデザイン事務所から出願権(意匠登録を受ける権利)の譲渡を受けますが、デザイン事務所側でも、できればラフスケッチの段階で意匠登録を受けられないか検討することをおすすめします。(特に「部分意匠」として防衛したい場合は、なおさらです。)

     なぜなら、登録可能性の高いデザインはクライアントにとっても通常のデザイン以上の価値を生み出すものですから、デザイン事務所にとっても権利譲渡において大きな報酬を得られる可能性が高いからです。

     Izu-officeでは、クライアントの方針も踏まえたデザインの評価についてのご相談にも応じますので、ぜひ一度お問い合わせ下さい。
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